「僕は君のいいなり」は人によって、好き嫌いが分かれそうです。
私は楽しく読めました。
受けと攻めの間に流れる危うい空気を楽しめる漫画を探している人にはおすすめです。
非人道的なことが苦手な人には、あまりおすすめしません。
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おすすめする人
「僕は君のいいなり」をおススメする人はこんな人です。
- 空気感がある漫画を読みたい人
- 背徳感のある恋愛を読みたい人
雰囲気がある漫画を読みたい人
「僕は君のいいなり」は主人公たちは高校生なのですが、描かれているのは大人の恋愛です。
私の中では、子供の恋愛と大人の恋愛は、このような違いがあると思っています。
- 子供=野暮 ←→ 大人=暗黙の了解を心得ている
- 子供=自分の考えを相手にぶつける ←→ 大人=相手の考えを尊重する
「僕は君のいいなり」は、ざっくり言うと、受けが攻めに痴漢されるという話です。
受けは、なぜ攻めが自分を構うか分かりません。
構う理由を、受けは聞きませんし、攻めも説明しません。
理由を知らないまま、行為だけが発展していきます。
お互いの気持ちを聞かず、あくまで自分の中で予想しながら、お互いに踏み込まず、精神的な距離を一定に保ちながら、関係だけが進んでいくような恋愛は、大人ならではだと私は思います。
この大人の恋愛が「僕は君のいいなり」の魅力の1つです。
さらに「僕は君のいいなり」は、なるべく漫画的表現をせず、リアルな描写で描くことで、大人の恋愛を、さらに魅力的に表現しています。
私が思う、漫画的な描写とリアルな描写の違いはこのような感じです。
- 漫画的=モノローグやセリフで状況説明 ←→ リアル=本人以外が表現
- 漫画的=デフォルメやギャグ顔 ←→ リアル=細かな表情を描き分ける
例えば、主人公が辛い状況に会うシーン1つ取っても、いろいろな描写があると思います。
- 主人公が「辛いなあ」と言う
- モノローグで「辛い・・・」と入る
- テレビに映っているドラマの登場人物が、主人公と似たような状況に会い「辛い」と叫んでいる
- 雨が降り出して、主人公が黙って濡れる
上に行くほど、漫画的で、下に行くほどリアルになると思います。
下の2つは、言葉で表現するのではなく、主人公以外に代弁させる形で、主人公の辛さを表現しています。
はっきり言葉にすれば、漫画的には、わかりやすくなります。
しかし、実際に辛い目に合うと、なかなか言葉は出てこないものだと思います。
そのため、本人の言葉が少なければ少ないほど、リアルな空気感が出ると、私は思います。
「僕は君のいいなり」を読んで印象的だったシーンを1つご紹介します。
攻めが、受けを心配して、ペットボトルの水を渡します。
攻めは、受けに水を渡し終わったら、去っていきます。
残された受けは、水を飲みます。
受けは、水を飲み終わると、顔を真っ赤にして目を伏せます。
そして「・・・あま」と呟きます。
この「あま」というセリフは、描写だけ見ると、飲み物が甘かったように見えます。
しかし、もちろん飲み物が甘かった訳ではありません。
受けが飲んでいるのは、水です。
「甘くない飲み物が、甘く感じる」というの描写は、「とてもささやかな優しさなのに、それだけで、とても強く愛情を感じた」という表現だと思います。
「僕は君のいいなり」は空気感がある漫画です。
二人の間に流れる空気感を楽しめるような、大人の恋愛を読みたい人には、「僕は君のいいなり」はとてもおすすめだと思います。
背徳感のある恋愛を読みたい人
上記にも書きましたが、「僕は君のいいなり」は、受けが攻めに痴漢されるという話です。
学校のいたるところで、友達や、同じ部活の部員に隠れて、行為を行います。
しかも、二人の関係性ははっきりしないままです。
二人はあくまで、部活の先輩と後輩という関係です。
つまり、
- 付き合ってもいないし、セフレでもないのに、行為だけが進んでいく
- 周りに隠れて、行為を行う
ということです。
このような関係は、とても背徳感がある関係だと思います。
読んでいる側も、はらはらすることがあり、だからこそ、物語に引き込まれます。
「行為だけでなく、二人の関係もちゃんと進んでいくのか?」が、「僕は君のいいなり」の見所の1つです。
おすすめしない人
「僕は君のいいなり」をおすすめしにくい人はこんな人です。
- がっつりしたエロを読みたい人
- 学生のフレッシュな恋愛が読みたい人
がっつりしたエロを読みたい人
タイトルから、がっつりしたエロを想像した人も多いと思います。
なんたって「言いなり」ですからね。
タイトルだけ見ると
- 変態プレイ
- 青姦
- アクロバティックな対位
- 大人のおもちゃ
- 言葉責め
などを想像する人もいるかと思います。
目隠し、おもちゃ、言葉責めは、少し出てきますが、そこまでハードではありません。
また、「僕は君のいいなり」は、全体の話に占めるエロシーンの割合は多いのですが、1つ1つのエロシーンが、特別長くありません。
そのため、攻めの愛撫や突きの1つ1つに、受けが様々な反応をしたり、受けが徐々に感じ始め、最終的によがり狂う、といった濃厚なエロが描かれている訳ではありません。
そのため、がっつりエロを読みたい人にとっては、すこし肩透かしを食うかもしれません。
学生のフレッシュな恋愛が読みたい人
「僕は君のいいなり」の舞台は高校です。
そのため、学生のフレッシュな恋愛を期待している人もいるかもしれません。
しかし、登場人物は、かなり大人びています。
そのため、学生特有の
- 何かに夢中になって周りが見えなくなる
- 恋愛や性的なことに戸惑う
- 感情が先に立ち暴走する
というようなことはありません。
特に受けは、どこか人生を悟っているような様子があり、変に諦めグセがついた大人のようです。
そのため、学園恋愛モノを読みたい人にとって、「僕は君のいいなり」はフレッシュさに欠ける作品かもしれません。
他作品との違い
「僕は君のいいなり」と似たような、背徳的な空気の流れる漫画と比較した感想をまとめます。
「俺しか知らないカラダ」著者:薄井いろは
- 「攻めを好きな受けが、攻めの横暴を我慢する」という構図は「僕は君のいいなり」も同じ
- 絵は「僕は君のいいなり」の方がデフォルメされている
- 「僕は君のいいなり」の方が変態プレイが多い
>> 俺しか知らないカラダの感想を読む
読了感
「僕は君のいいなり」の予想読了感をまとめます。
欲求不満な人
欲求不満ぎみな人は、「僕は君のいいなり」を読むと満足すること間違いなしです!
・・・とは言い過ぎですが(笑)
受けはとても恥ずかしがり屋です。
そのため受けは、「エッチしたい」「触って欲しい」など、ストレートに攻めに言えません。
しかし、言う暇がないほど、攻めは、がんがんに求めてきます。
恥ずかしくて言えないけど、自分の欲求に答えてくれる、という相手は、とてもありがたい存在ではないでしょうか。
欲求不満な時に「僕は君のいいなり」を読むと、受けがとても羨ましく感じると思います(笑)
さらに、攻めは、後半スパダリに変貌を遂げます。
今まで、自分のことをおもちゃのようにしか思っていなかった相手が、自分の可愛さに惚れてしまい、心を入れ替え、立派なスパダリになる展開は、夢を見せてくれる展開ではないでしょうか。
努力家な人
努力家な人や、向上心のある人は、登場人物に共感しにくいかもしれません。
人によっては、主人公二人のやりとりを見ても、茶番に見えるかもしれません。
受けは、攻めに愛されることを、はじめから諦めています。
攻めとの関係性を修正しようと行動することはありません。
聞きたいことがあっても、自分を押し殺して、ただ流され、レイプされ続けます。
努力家で行動力がある人が見ると、うじうじして見えるかもしれません。
攻めは、上記のように、人間性に難ありですが、後半、心を入れ替えます。
攻めは受けと違って、努力し、行動に移す人です。
そのため、最初は非人道的だったとしても、受けより、攻めの方が、比較的受け入れられるかもしれません。
感想まとめ
私にとっては、登場人物に感情移入して楽しむというより、主人公二人を見守りながら、展開を楽しむという側面が強い漫画でした。
泣いたり笑ったりはありませんが、読み終わった後ため息がでるような、じわっと心にくる漫画でした。