イラストコラム

絵に才能は必要か?

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絵の才能とはなんなのか?才能が存在したとした場合、どのように付き合っていけば良いかを考えていこうと思う。

絵の才能があるとは?

まず、絵の才能を論じる前に、才能がある状態/ない状態とは何を指すのかを明らかにしておこうと思う。「絵の才能がある/ない」という言葉を選ぶ時は、3つの意味合いがあると思う。

  1. 絵で成功している
  2. 自分が思うように描ける
  3. 難しいことができる

絵で成功している

これは、絵で社会的立場を獲得しているか、ということだ。絵師として有名である、作った作品が人気である、絵でお金を稼いでいる、などである。

自分が思うように描ける

これは、周りの評価と言うより、自分の中の満足度が高いかどうか、ということだ。自分でイメージしたように、もしくはイメージ以上のクオリティの絵が描ける、などである。

難しいことができる

これは、人間離れした難易度の高い技巧を持っているか、ということだ。緻密な絵が描ける、写真のような絵が描ける、驚くほどの速筆である、などである。

絵の段階と各段階の才能

以上のことを、絵の段階順に並べて、各段階で、才能がある人/ない人が、どのような人かを図でまとめてみた。

共感度

テーマ設定や、キャラデザ・絵のトーンやタッチなどのデザインは、共感度を左右する。絵が受けない、といった場合、大体の場合は、テーマがよく分からない、キャラデザが可愛くない、という場合が多い。自分が感じた事をテーマとして設定し、自分が可愛いと感じるキャラデザを採用して絵を描くとする。そうした場合、自分が感じた事は他の人も感じてて、自分が好きなデザインは他の人も好き、という状態が才能がある人だろう。

キャラクターデザインによる違い

伝達度

構図や演出は伝達度を左右する。共感しやすいテーマにして、人から好かれやすいデザインのキャラを用いて描くとする。その時に、より多くの人に、より伝わりやすくする役割を担うのが、構図や演出といった分野だ。

構図の分野

以下のようなテクニックを用い視線を誘導する

  • 明暗のコントラスト
  • 色のコントラスト
  • 粗密のコントラスト
  • リーディングライン

↓マイクアームでリーディングラインを作った例

演出の分野

以下のようなテクニックを用い感情を表現する

  • 人物の表情を歪める
  • 人物に大きな身振りをさせる
  • 青い照明にする

↓人物の表情や身振りによる違い

暖色系の照明と、寒色系の照明による違い

伝える相手がいる以上、相手の立場に立つ必要がある。絵を描く時には、自分が描くのが大変だった場合、大変だったところをよく見てもらいたくなる。しかしこれは内向的な考え方だ。見る人にとっては、描くことが大変だったかどうかは関係ない。絵からどういった印象を受け、どういうメッセージを受け取ったかしかない。見る人に伝わりやすいように、この絵を全く知らない人がゼロから見た時にどう思うか、相手の立場に立って想像できる外交的性格が、才能がある性格だろう。

描画難易度

絵は、立体や色を目で知覚し、一度、脳に記憶してから、手を動かす、という手順を踏む。知覚能力と記憶力の2つが、イメージ力と言われるものだ。頭の中のイメージが詳細だと、複雑な絵を描けたり、早いスピードで描けたりするようになる。また、絵は座って手を動かすので、描くことは運動の一種である。知覚能力、記憶力、運動能力が高い人が、才能のある人だろう。

平面的に捉えて斜めから見る場合と、立体を捉えて斜めから見る場合と、凹凸を拾う場合と省略する場合

認知度

作品を作った後は、誰かにリツイートしてもらったり、誰かに売り込みにいって流通に乗ったりして、広まっていく。これには人脈の力だ。人に囲まれるのが好きな性格だったり、人を楽しませるサービス精神を持っているなど、人脈が広がりやすい性格の人が、才能のある人だろう。

才能は存在する

以上のようなことを考えると、才能は存在する、というのが私の立場だ。なぜなら、以下のようなものは遺伝で、ある程度決まってくるからだ。

  • 共感度や伝達度を左右する、外交的内向的といった関心の向き
  • 描画力を左右する、空間把握・色彩知覚・記憶力といった身体能力
  • 認知度を左右する、人から好かれる性格や言動

才能があれば自分の感性に従って行動すれば、自然と人に受け入れられ、広まる。しかし、才能がなければ、知識や訓練でカバーする必要がある。そのため、時には的を射ることができなかったり、目標のレベルに達するまで時間がかかったりする。さらに言えば、知識を得る時に必要な読解力や、訓練する時に必要な集中力や体力も遺伝が関係するものだ。

才能がないなら、描かないのか?

才能が存在したとした場合、じゃあ才能がない人は絵を描くべきではないのか?それは、話が別だろう。なぜなら「才能がない人が描くべきではない」のは、以下の条件を全て満たす場合だけだからだ。

  1. 大成功することがゴール
  2. 目指す分野に、才能のあるライバルが既にいる
  3. 供給過多

逆にいうと、大成功することを求めない場合は、才能は不要ということになる。残るのは、やりたいか、やりたくないか、だけである。大成功を求めず、技術を習得すること自体を楽しんでいる人も大勢いるはずだ。

才能がなくても、高レベルに行きたい

仮に、才能がなくても短時間で高いレベルに到達したいという人がいたとしても、現代は良い時代になっただろう。知識が楽に得られるようになり、AIにより描画難易度も随分と下がった。AIが今後発展していけば、伝達度、共感度の高い出力ができるようになり、才能によって別れるのは、認知度の領域だけになるだろう。さらに言えば、認知度の領域もお金である程度解決できる領域である。

結局、やりたいか、やりたくないか

絵に才能が必要か?と考えた時、無意識に成功するかしないかを考えている人が多いように思う。確かに、成功が確約されていると、安心して一歩を踏み出せるということもあるだろう。しかし「上手くいくことが保証されている道」というのは、得てして「既に先人が開拓した道」であることが多い。つまりライバルが大勢いて、結局「成功が難しい道」になっている事が世の常だ。であれば「成功できるかは分からないけど、やりたいからチャレンジしてみる」という考え方の方が楽しくなるのではないだろうか。そもそも、成功しなくても、人間、できることが増えるのは、嬉しいものだし、そこで得たものは違う分野で役に立つことも多々あるだろう。無駄になることの方が少ない。なので結局、人生やったもん勝ちなのである。

  • この記事を書いた人

森武絵辰

福岡生まれ福岡育ち。布団と小説が、三度の飯より好き。

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